干潟に猫が生まれました。
1ヵ月前、干潟のおじいさんの家にいるハヤブサが子猫を4匹生みました。
おじいさんは、自分のところにきた捨て猫のうちメスがいると、ボランティアの方々に頼んで、繁殖しないように避妊手術をしています。
ただでさえ、次々と捨てられる猫たちの世話で経済的に苦労しているのに、これ以上繁殖してしまうと面倒を見きれないからです。
ハヤブサはおよそ1年前におじいさんが保護したのですが、まだ子猫だったので油断して避妊手術をしていませんでした。
ところが、ハヤブサはいつの間にか妊娠していました。
そして4匹の子供を出産しました。
初めは目も見えずネズミのように小さかった子猫たちも、ひと月たってだいぶ大きくなり、今ではケージの中で活発に動き始めています。
歯も発達してきて、おじいさんが指を差し出すと噛みついてきます。
そんな子猫たちをハヤブサはケージの外へ出そうとしますが、おじいさんの家の周りには、ヘビやカラス、ハクビシン、タヌキなどが出没するので、おじいさんはある程度成長するまでは用心をと、自分の目の届くところで見守っています。
おじいさんは子猫たちを里親に出すことを決めています。
自分の年齢を考えると最後まで面倒を見ることが出来ないと思っているからです。
「ほんとは、手放したくないんだけどなあ…」
多い時は20匹、今も15匹ほどの捨て猫たちの世話をしているおじいさん。
シジミを獲りながら日銭を稼ぎ、ギリギリの暮らしをしているおじいさんが、何故そこまでして猫たちの面倒を見ているのか。
「東京干潟」を撮る動機になった理由のひとつがそれでした。
村上浩康(製作・監督)